実施日:2024年10月19日(土)・10月20日(日)
スケジュール:16時開場/16時30分上映開始(両日とも)
上映 [3時間]:金村修 [1時間]、石田省三郎 [2時間]
アフタートーク [45分]:石田省三郎・金村修・梅津元
会場:CAVE-AYUMI GALLERY(東京都新宿区矢来町114高橋ビルB2)
料金:1,500円(ワンドリンク付/当日のみ)
定員:30名(当日先着順)
主催:Modulation 8
協力:CAVE-AYUMI GALLERY
石田省三郎 [Shozaburo Ishida]
1946年生まれ。中央大学法学部法律学科卒業。1973年、弁護士登録。沖縄・松永事件などの弁護に携わる。著書に『「東電女性社員殺害事件」弁護留書』など。弁護士業務のかたわら、2017年、京都造形芸術大学(現:京都芸術大学)通信写真コースを卒業。2018年、福島第一原子力発電所事故により「帰還宅困難区域」に指定された地域をJR常磐線代行バスから撮影した写真集『Radiation Buscape』(デザイン:鈴木一誌+山川昌悟、解説:タカザワケンジ)を刊行。2021年、神奈川県美術展・写真部門準大賞受賞。個展に「Crossing Ray」(Hiju Gallery, 大阪, 2019)、「Integral」(IG Photo Gallery, 2021)、「TSUKIJI JONAI」(PHOTO GALLERY FLOW NAGOYA, 2022)、「Nights, Walking: Chigasaki」(ギャラリー・アートグラフ, 2022)、「an ironical moment」(IG Photo Gallery, 2023)ほか。2021年より動画制作を開始、《unknown diary》と命名し、「Modulation 8 第一回上映会」(The White, 2022)、「MOVING IMAGES」(IG Photo Gallery, 2023)などで発表している。IG Photo Gallery主宰。
金村修 [Osamu Kanemura]
1964年、東京都生まれ。写真家。東京綜合写真専門学校在学中の1992年、オランダの「ロッテルダム・フォト・ビエンナーレ」に作品が選出される。1993年に東京綜合写真専門学校を卒業し、同年に最初の個展を開催。1995年には写真集『Crash Landing』を刊行。1996年、ニューヨーク近代美術館の「New Photography 12」に「世界に注目される6人の写真家」のひとりとして選ばれる。1997年には東川町国際写真フェスティバル新人作家賞を受賞。2000年、土門拳賞を受賞。2014年には伊奈信男賞を受賞。主な写真集に『Happiness is a Red before』(2000)、『SPIDER’S STRATEGY』(2001)、『I CAN TELL』(2001)、『In-between 12 金村修 ドイツ、フィンランド』(2005)、『ECTOPLASM PROFILING』(2014)、『CONCRETE OCTOPUS』(2017)、『Lead-palsy Terminal』(2021)などがある。著書には『漸進快楽写真家』(2009)、『挑発する写真史』(タカザワケンジとの共著、2017)、映像論集『Beta Exercise: The Theory and Practice of Osamu Kanemura』(2019)などがある。2021年にはニューヨークのdieFirmaで個展「Looper Syndicate」を開催。2022年と2024年にCAVE-AYUMI GALLERY にて個展を開催。近年は写真制作と並行して、映像作品、コラージュ、ドローイング、本による作品など、表現の幅を広げており、個展、グループ展、上映会等で発表している。https://kanemura-osamu.com
ステートメント
PROJECTED PROJECTION vol.01
以後の風景:石田省三郎 feat. 金村修
「PROJECTED PROJECTION」、まるで同語反復のようだが、この表現は、エヴァ・ヘスの作品 《Expanded Expansion》(1969)に由来する(この作品の説明はここでは割愛)。まず、後者の「PROJECTION」には、映像作品を上映する行為としての「プロジェクション=映写」の意味を込めた。次に、前者の「PROJECTED」には、上映会を計画して実施する「プロジェクト=企画」の意味を込めた。すなわち、「PROJECTED PROJECTION」とは、まずは、「上映会を企画すること」を意味している。そして、さらに、ここで、強調したいことは、このような「上映会を企画する」という行為自体を、「投企=プロジェクト」として、打ち出したい、ということである。
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「投企」とは、聞き慣れない言葉だろうか。ここで、参照しているのは、1996年に京都国立近代美術館において開催された展覧会「プロジェクト・フォー・サバイバル 1970年以降の現代美術再訪:プロジェクティブ[意志的・投企的]な実践の再発見に向けて」である。優れてプロブレマティック=問題提起的な、この忘れ難い展覧会を企画した河本信治は、同展図録に寄稿した序文を次のように締めくくる(上記展覧会図録、9頁)。「なぜ投企という言葉が私たちの日常から消えてしまったのだろうか。多くの人は、そのような日本語はかつて一度も存在しなかったと言う。再び投企を考えるためにマルクーゼを持ち出すのは時代錯誤かもしれない。ここではヴィレム・フルッサーの長い引用を転載した。私たちが再び投企について考え始める、「こう期待するのは、楽観的すぎるだろうか?」」以下、河本が引用するフルッサーの論考の一部を紹介する。
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「われわれは、もはや直面する事態から取って返すことができないような、カタストロフィー的転換点に達したのである。いままでいつも取ってきたような、「もっと高次の」抽象化の道でやっていくことは、もうできない。われわれは、もはや何も摑むことができない(かつて手が空を摑んだように)。物を頼りにすることもできないし、われわれ自身も頼りにできない。こうした絶望の淵から(つまり、信仰の喪失から)われわれは投企を始めるのだ。(中略)われわれは信仰の喪失から投企を試みるようになるのだが、信仰の喪失は、神とか物とか人間とかいった拠り所に対する信頼が失われたことを意味するに止まらない。もっと重要なのは、そもそも方向づけを与えてもらう可能性があるなどとは信じられなくなった、ということだ。しかし、この徹底的な信仰喪失こそが、自由にとって開かれた場であることが判る。」(上記展覧会図録、16頁。)
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「以後の風景」は、東京都写真美術館において開催された特筆すべき展覧会「風景論以後」(2023年)に触発された命名である。石田省三郎の映像を見る、金村修の映像を見る、その経験から惹起される言葉のひとつが、「風景」である。だが、「風景」とは何か、映像によって「風景」を表現することは可能なのか、写真や映像という媒体の登場「以後」の風景とは、どのようなものなのか、果たして、それを「風景」と呼ぶことは可能なのか。「風景論」とは何か、そもそも、「風景論」は可能なのか、そして、「風景論以後」の風景とは、どのようなものなのか。ここでもまた「問い」は原理的であるだろう。アフタートークでは、このような原理的な「問い」を制作者ならびに鑑賞者と共有し、「風景」をめぐるテキストも参照し、「映像」、「風景」、「表現」をめぐるディスカッションを行う。積極的な参加を期待する。
(文責:梅津元/Modulation 8)
PROJECTED PROJECTION
アーティストが制作を継続するためには、作品を他者に見せ、多様な立場からの声に耳を傾ける必要があります。商業映画に代表される時間軸映像とも、映像インスタレーションに代表される空間型映像とも異なる、いわゆる「映像表現」は、この点において、難しい立場に置かれています。実験映画、ビデオアート、自主制作アニメーションなどの上映会を通じて、制作者と鑑賞者が意見を交わす、生産的な議論の場が、確かにありました。現在でもそうした活動は継続されていますが、映像批評の活性化を目指す上でも、発表、鑑賞、ディスカッションという、表現者と鑑賞者の相互交流の場が求められています。
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このような状況をふまえ、映像表現と映像批評の活性化に寄与することを目的として、Modulation 8は「PROJECTED PROJECTION」と命名された上映会を立ち上げます。企画にあたっては、一人の制作者の実践を具体的な事例とするプランを採用し、石田省三郎の映像作品を継続的に紹介するプログラムとして実施します。毎回、ゲストを招き、石田作品とゲストの作品を上映し、上映後にはアフタートークを実施する予定です。今回、第1回のゲストは、写真家/映像作家の金村修です。映像による「表現」とは何か、そもそも、映像による「表現」は可能なのか。そのような、素朴であるがゆえに原理的な問いを発すること、そして、鑑賞体験と原理的な「問い」を共有するところから、映像をめぐる批評を活性化させる議論が交わされることを期待しています。
Modulation 8
金村修、小松浩子、梅津元により、2021年に結成されたコレクティヴ。表現者と鑑賞者による双方向の創造的な営為の活性化をめざし、映像、音楽、写真、美術など個別のジャンルに収まりきらない表現活動の場の開拓を主軸に活動。2022年に「Modulation 8 第一回上映会」「MODULATED CAVE」、2023年に「oject vol.0」「oject vol.1/ MODULATED CAVE」を企画。後進の教育活動にも力を入れており、「金村修ワークショップ」の運営にも参画している。