第一回上映会について
実施日:2022年3月26日(土)・3月27日(日)
上映時間:13時から19時まで
主催:Modulation 8
会場:The White (東京都千代田区神田猿楽町2-2-1 #202)
入 場 料:1,000円
入場者数:30名(有料入場者数:20名)
制作物:チラシ(170×297mm)/デザイン:山田洋一
開催趣旨
この上映会は、2021年8月に起動した「Modulation 8」による初めての主催事業として企画されたものである。第一回目の上映会として、「Modulation 8」の活動方針をふまえ、映像、写真、音楽、美術など個別のジャンルに収まりきらない表現者の発表の場の開拓と周知を目標に、非ナラティブ性を特色とした映像作品をセレクションした。
上映作品(上映順:作者名/作品名/制作年/時間)
アルマンド・ルラァイ/BREAKING STONES/2017年/10分31秒
澤田育久/ejection device/2022年/9分36秒
マルコ・マッツィ/FOLLOW US OR DIE! /2020-2022年/9分43秒
金村修/Are You Public Domain?/2020年/25分10秒
小松浩子/Silent Sound/2020年/15分16秒
石田省三郎/unknown diary/2021-2022年/30分
(合計上映時間:100分16秒)
上映形態
上映作品の項目に記載した1から6までの6作品を通しで上映した。最後の6作品目の上映が終了すると、最初の1作品目の上映が始まるループ上映とした。すなわち、「6作品通しで約100分のプログラム」が繰り返し上映される形態である。この上映形式により、鑑賞者は、上映開始/上映終了のタイミングを待たず、会場に自由に出入りすることが可能であった。また、鑑賞する時間も、鑑賞者各自に委ねられており、特定の作品の鑑賞を目的とすることも、全上映作品を複数回鑑賞することも可能であった。
この形式は、Modulation 8 の活動方針に掲げられている項目「時間軸映像と空間軸映像」をふまえるならば、次のように説明できる。すなわち、上映した6本の映像作品自体は「時間軸映像」として制作されているが、6本からなる上映プログラムは「空間軸映像」の原理によって会場で上映された、ということになる。このような方法は、鑑賞の自由度を確保するという現実的な側面があると同時に、映像表現の受容という側面について議論する上でも意義深い。
総括
Modulation 8 による初めての上映会として、十分な成功を収めたといえる。企画から開催まで短期間であり、十分な広報が展開できた訳ではないが、2日とも熱心な観客が来場し、上映作品に対する反応は非常によかったと言える。このような趣旨の上映会が極めて稀であることがその要因のひとつであることをふまえるならば、Modulation 8 による上映会は、映像表現と他分野との積極的な交流をはかる上で、大きな意義があることが確認できた。
特に重要な点は、今回は、写真を主たる媒体とする表現者による映像作品を多く紹介できたことにある。「非ナラティブ」というキーワードが示すように、「物語」に依存しない映像表現の可能性は、写真と映像の関係の考察を促してくれる。この論点は、Modulation 8 の活動方針に掲げられている項目「映画と映像」、「写真と映像」をふまえて、今後、さらに開拓されることだろう。
また、上映を通して課題として浮上した論点は、「ナラティブ」と「非ナラティブ」という分類が便宜的なものでしかなく、この図式によって示される二項対立を深く掘り下げることによって表出してくる感性をどのようにとらえるか、ということである。この論点は、Modulation 8 の活動方針に掲げられている項目「形式性と叙情性」をふまえて、今後、さらに開拓されることだろう。
最後に、今回の上映会が、主催者、出品作家、鑑賞者による双方向の交流の機会として、十分な機能を果たしたことを記しておきたい。鑑賞を終えた観客の多くは、隣室に設けられた関連書籍等の販売スペースに立ち寄り、各々、上映会全体について、また、個別の作品について、積極的に感想を述べていた。その内容は、とてもよいプログラムであり、刺激を受けた、今後も続けてほしい、という趣旨が多かった。
中には、鑑賞後、SNSに、「「表現者と鑑賞者による双方向の創造的営為」を機能させるためというフライヤーの文言に心動かされ今日なら行ける!と。」と投稿してくださった方もいらした。このような動機で来場してくださった方がいらしたという事実は、Modulation 8 を立ち上げた目的が、すでに鑑賞者と共有されていることを示しており、主催者として、大変励みになることであった。以上、第一回目となる上映会の成果と反省をふまえ、Modulation 8 は、今後も、さらに充実したプログラムの実現をめざして活動を続ける。